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経営セーフティー共済が使い勝手の良い節税策って本当?(経営セーフティー共済の活用)

 
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創業や経営支援分野に注力している税理士事務所です。税理士としては珍しい大手金融機関で融資実務を経験したキャリアを持ちます。どんな些細なことでも相談していただけるように丁寧な対応を心掛けています。
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年末が近くなってきたのですが、急に大きな取引が成立して、思っていたよりも利益がすごいことになりそうです。

教えて君

それはうれしいことじゃないか。なんで困った顔してるのかな?

ベテラン先生

それは、税金に決まってるじゃないですか。先生、何か良い節税対策ってないですかね?

教えて君

使い勝手の良い節税対策があるといえばある。けど、注意点もあって・・・

ベテラン先生

「年末近くなっても、ぱっと使えるような使い勝手のいい節税対策ってない?」

こんなお声を聞くことも良くあります。

実は、独立行政法人が運営している信頼できる制度で、年末近くなってもそこそこの金額を経費として計上でき、また、一定の期間が経過すれば掛金もちゃんと返ってくる、そんな節税対策もあります。

もちろん注意点もありますが、知っておいて損はしない経営者必見の制度ですので、是非、ご覧ください。

 

経営セーフティー共済の概要

経営セーフティー共済の概要を以下にまとめています。

なお、以下の制度概要の詳細は、独立行政法人中小企業基盤整備機構のHPでご確認願います。こちらの内容も同HPよりまとめています。

制度概要

  • 根拠立法:中小企業倒産防止共済法
  • 運営主体:独立行政法人中小企業基盤整備機構
  • 制度目的:中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防止する共済制度
  • 共済制度:取引先の倒産等を理由とする貸付(最大掛金の10倍まで)、事業資金の一時貸付
  • 共済掛金:月額5千円~20万円までを自由に選択、前納も可能、最大800万円まで
  • 加入実績:全国約40万社(平成28年3月末現在)
  • 貸付累計件数:約27万件(平成28年3月末現在)
  • 貸付累計金額:約1兆9千億円(平成28年3月末現在)

上記の図は、独立行政法人中小企業基盤整備機構のHPより抜粋しています。

独立行政法人が運営していて、これだけの加入実績もある制度ですので、信用力は言うまでなく、安心して利用できる制度といえます。

加入要件

法人や個人の加入要件は、以下のとおり定められていますが、個人事業で以下を超えるケースは考えにくいため、ほとんどの場合は問題なく加入できるものと思われます。

上記の図は、独立行政法人中小企業基盤整備機構のHP(「加入資格」)より抜粋しています。

ただし、上記をクリアできても、以下のいずれかに当てはまる場合は、加入できないこととなっているため、注意が必要となります。

とはいえ、どれも常識的な点ばかりですので、あまりに気にすることはありませんが、一番下のところで、重複加入はできませんので、注意が必要です。

  • 住所または主たる事業の変更を繰り返し行ったため、継続的な取引の状況の把握が困難な方
  • 事業に係る経理内容が不明の方
  • すでに貸付けを受けた共済金または一時貸付金の償還を怠っている方
  • 中小機構から返還請求を受けた共済金、一時貸付金、早期償還手当金、解約手当金の返還を怠っている方
  • 納付すべき所得税または法人税を滞納している方
  • 12ヶ月分以上掛金の納付を怠ったため、または偽りその他不正の行為等のため、中小機構によって共済契約を解除され、解除された日から1年を経過していない方
  • 偽りその他不正の行為により共済金もしくは一時貸付金の貸付け、または早期償還手当金もしくは解約手当金の支給を受け、または受けようとした日から1年を経過していない方
  • 現に共済契約者となっている方(重複加入はできません)

(以下は、独立行政法人中小企業基盤整備機構のHP(「加入資格」)より抜粋)

共済金の貸付制度

取引先事業者の倒産により、売掛金銭債権等が回収困難となった場合には、以下の条件で共済金の貸付を受けることができます。

注意すべきは、無利息という点です。

無利息ではあるものの、貸付額の10%相当の掛金が控除されるため、これが事実上の利息に相当すると考えられます。

  • 貸付限度額:回収困難となった売掛金銭債権等と掛金総額の10倍のうち、いずれか少ない金額。例外あり
  • 貸付単位:50万円から8千万円までで5万円刻み
  • 返済期間:貸付額に応じて5年~7年、6か月の据置期間あり
  • 返済方法:毎月均等返済
  • 貸付利率無利息。ただし、共済金の貸付額の10分の1が掛金から控除
  • 担保・保証:なし

ちなみに、倒産の定義ですが、破産手続き開始などの法的整理に加え、銀行取引停止処分、私的整理、災害による不渡りなどが該当しますが、夜逃げは倒産の定義には含まれませんので、注意が必要です。

なお、経営セーフティー共済に加入してから6か月が経過していない場合や、貸付請求が倒産から6か月以上経過してからされた場合など、貸付を受けれないケースもありますので、この点は要注意です。詳しくは、独立行政法人中小企業基盤整備機構のHP(「共済金について」)を参照ください。

事業資金の一時貸付

取引先の倒産は発生していないけど、一時的に資金が必要になったというケースもあるかと思います。

この場合、契約を解約することなしに、一時的に事業資金の貸し付けを行う制度も用意されています。

なお、一時貸付の条件は以下のとおりとなります。

  • 貸付限度額:最大、解約手当金の95%の範囲内
  • 貸付単位:30万円以上、5万円刻み
  • 返済期間:1年
  • 返済方法:期日一括返済
  • 貸付利率:0.9%、前払い
  • 担保・保証:なし

制度の詳細については、独立行政法人中小企業基盤整備機構のHP(「一時貸付金について」)を参照ください。

そもそもの制度趣旨は節税対策のための制度ではないということだね。けど・・・

ベテラン先生

使い勝手が良い節税策と言われる理由

さて、経営セーフティー共済の制度概要を見てきましたが、ここでは、なぜこの制度が節税対策として、使い勝手が良いと言われているのかをご説明いたします。

年払いが可能

まずは、最大で一年間の前払いによる経費計上が可能であるという点です。

個人事業主の場合、年末近くなって、節税対策を検討した場合でも、一年間の前払いを活用することで、最大で掛金20万円×12月分の合計240万円の経費を作ることができます。

個人事業主にとって、年末近くなって240万円もの経費を一気に作れるというのは本当にインパクトの大きいことだと言えます。

一定期間経過すると掛金は全額返ってくる

うれしいことに、40か月以上加入することで、任意解約を行っても掛金の全額が戻ってくることになります。

ちなみに、掛金の返戻率は以下のとおりとなります。

上記の図は、独立行政法人中小企業基盤整備機構のHP(「解約手当金について」)より抜粋しています。

独立行政法人が運営している安心の制度で、40か月以上継続すれば、任意解約をしても100%掛金が戻ってくるという点は、非常に安心の内容になっています。

年の途中での「掛金変更」や「年払いから月払いへの変更」も可能

今までは月20万円の掛金を支払ってきたけど、今年は事業が不調でこの掛金の負担が大きくなってきたということもあるかと思います。

この場合、年の途中での掛金の金額を変更することもできますので、最も小さい月5千円まで減額することも可能です。

また、これまでは、年払いで対応してきたけど、これからは、月払いに変更したいという場合でも、変更が可能となります。

この点も加入を検討する方にとっては、安心の制度といえるのではないでしょうか。

 

加入を検討する上での注意点

経営セーフティー共済は、非常に安心の制度といえますが、注意点もあります。

加入を検討するにあたっては、以下のようなことも事前に検討してみるとよいのではないかと思います。

個人は事業所得のみ経費算入が可能

法人では、不動産賃貸業でも経費として認められますが、個人の場合は事業所得のみ経費として認められますので、不動産所得からの経費計上は認められませんので、注意が必要です。

詳しくは、独立行政法人中小企業基盤整備機構のHP(「掛金について」)をご確認願います。

解約までの資金繰りに気を付ける

毎月の掛金を20万円とすると、年間240万円の経費計上が可能となりますが、240万円の税金が減るわけではありません。

所得税の税率を20%、住民税の税率を10%とすると、節税額は240万円×30%=72万円となり、資金的には168万円の持ち出しとなってしまいます。

また、解約するまでは、当然に掛金は返ってきませんので、多額の資金を寝かせてしまう結果となります。

加入にあたっては、節税と合わせて、資金繰りを考慮して考えることは必須といえます。

掛金に運用益なし

お金を寝かせることに加えて、この掛金はずっとかけっぱなしでも一円の利息も生み出さないということも考慮する必要があります。

連鎖倒産のためのセーフティーネットだということで掛けているのであればまだしも、単なる節税目的だけで加入するのであれば、一円の利息も生まない資金を相当期間寝かせてしまう結果となります。

本来であれば、事業から得た資金を更なる事業の発展のために投資を行って事業拡大を図らなくてはならないところ、そのなけなしの資金を節税(といっても単なる先送り)のために寝かせてしまうというのであれば、もったいないことになります。

ただし、前納の場合は0.5%分の前納減額金が発生します。

解約金は課税の対象

40か月以上継続すれば、掛金の全額が返ってくると記載しましたが、返ってきた解約金はどうなるのでしょうか?

答えは、事業所得の収入として課税の対象となります。

つまり、掛金は事業所得の経費に、そして、解約金は事業所得の収入に。

ということは、経費と同額の収入が発生することになりますので、トータルで考えた場合の税負担は、税率に変化がなければトントンということになります。

結局は、今年払うべき税金を来年以降に先送りしただけということになります。

ただし、「ずっと解約しなければ、節税効果は永遠でしょう?」と聞かれることもありますが、解約しなければ、資金も一生寝かせる結果となりますので、この点も踏まえて判断する必要があると言えます。

短期解約は元本割れのリスクあり

40か月以上継続すれば、掛金の全額が返ってきますが、40か月未満での解約の場合は、元本割れのリスクもあるということを認識しなくてはなりません。

年払いの期日と手続き漏れに注意

今年に年払いを行ったとしても、来年以降も年払いを行う場合は、毎年手続きが発生するということを忘れてはなりません。

また、前納を希望する月の5日(土日祝日の場合は翌営業日)までに、中小機構に届くように、前納の申出書を提出しなくてはなりません。

この手続きを忘れてしまうと、自動的に月払いに移行することになりますので、注意が必要です。

共済金の貸付実施までの時間に注意する

共済金の貸付実施については、今日申し込んで今日すぐに振り込まれるというものではありません。

手続きに一定の時間がかかるため、万が一の場合は、民間の銀行などで、共済金の貸付が実行されるまでのつなぎ資金の手当て等を検討する必要もあるかもしれませんので、この点には注意が必要です。

 

まとめ

経営セーフティー共済の本来の趣旨は、連鎖倒産を防ぐということを目的とした制度ですが、実質的には、節税対策として用いられるケースが多いと言えます。

使い勝手の良い制度ではあるものの、資金繰り面でのデメリットもあることから、目先の納税負担を減少させるためだけの安易な節税対策にはデメリットも多いことを認識した上で活用したいものです。

活用にあたっては、決算予測に加え、翌年以降の見通し(特に資金繰り)をたてた上で活用することをお勧めいたします。

資金繰りが苦しいのなら、敢えて、この制度は使わず税金を払ってでも、手元にお金を残すことをお勧めしたいですね。

ベテラン先生

 

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