会社設立のときの資本金の決め方のポイント

先生、会社設立のときは、資本金が1円でもいいと教えてもらいましたので、早速、資本金1円で進めてみたいと思います。
教えて君
おいおい。確かに、資本金1円からでも会社は作れるけど本当にそれでいいのかな?
ベテラン先生
どういうことでしょうか?
教えて君
資本金1円で会社は作れたとしよう。ただ、その後の運営のことを考えたら・・・
ベテラン先生
上記の会話のように、会社法が施行されてからは、確かに、資本金1円からでも会社を作ることができますが、実際には資本金1円の会社はそれほど多くないのではないでしょうか。
それはなぜでしょうか?そして、いったい資本金はいくらにしたらよいのでしょうか?
今日は、会社設立のときの資本金の決め方を税金や信用、融資などの観点から、じっくり考えてみたいと思います。
目次
そもそも資本金ってなに?
資本金とは会社を始めるときの元手のこと
資本金というのは、いわば会社をはじめるときの元手として、初めに払い込まれるもので、これをもとに設備投資を行ったり、事務所を借りたり、仕入を行ったりと、設立時の初期コストや運転資金を賄うことになります。
そして、「仕入→商品やサービスの提供→売上→代金回収→」という循環をぐるぐると繰り返すことで、利益を上げ、最終的には、株主に対して配当金という形で還元することになります。
そう考えると、1円でも会社を作ることができますが、1円では会社を作るコスト(登録免許税など)も賄えませんし、ましてや設備投資などの初期コストや日々の運転資金も賄えません。
会社法の施行により最低資本金制度は撤廃
会社法が施行されるまでは、債権者保護などの観点から、会社設立の際には、以下のように最低となる資本金が定められていました。
- 株式会社:1,000万円
- 有限会社:300万円
しかし、平成18年に会社法が施行されてからは、この最低資本金制度は撤廃され、資本金1円でも会社を設立することができるようになり、会社設立のハードルが大きく下がりました。
資本金の額は、会社謄本にも記載されるということを知っておこう。
ベテラン先生
資本金をいくらにするかの考え方
それでは、具体的にどうやって決めたらいいのという判断基準をいくつかご紹介します。
税金面でのポイント
現実的には、会社設立の際に、いきなり1,000万円超の資本金とするは、レアケースなのかもしれませんが、ご参考までにご紹介いたします。
資本金の額を1,000万円以上とすると設立初年度から消費税の申告が必要
会社設立の際に、資本金の額を1,000万円以上とすると、会社設立をした初年度から消費税の申告が必要になります。(詳細は国税庁HP参照)
消費税の申告が必要かどうかの判定は、上記のリンクのとおりとても難しい考え方ですが、通常では設立初年度と二期目は消費税の申告が不要となる可能性が高いといえます。
このため、特段の理由がなく、資本金の額を1,000万円以上に設定して、初年度から消費税の申告を行うことは無駄に納税負担を高める結果となるということを覚えておきたいですね。
資本金の額に応じて均等割の額も変わる
法人が支払う税金の中には、個人と同様に都道府県や市町村に対して支払う住民税もあるのです。
そして、この法人が支払う住民税には、利益に関係なく、仮に赤字であったとしても資本金等の額や従業員数に応じて税額が決まる均等割というものがあります。
このため、資本金の額を大きくすると、納税額もそれに応じて増えてしまう可能性があります。
参考までに、吹田市のホームページより、均等割の税額表をそのまま抜粋させていただきます。
なお、各都道府県、市町村ごとに金額は変わりますので、ご注意願願います。
3,000万円を超えると税額控除を受けれない規定もある
中小企業投資促進税制や商業等活性化税制などのように、設備投資を行った場合などに税制優遇を受けることができる制度の中には、特別償却と税額控除を選択できるものがあります。
このうちのいくつかの規定では、資本金3,000万円を超えると、税額控除を選択できない規定もあります。
許認可でのポイント
人材派遣事業などのように、許認可の要件として、資本金の基準があるものもありますので、許認可が必要な事業を行う場合は、必ず事前に確認する必要があります。
信用上のポイント
一般的に、資本金の額は、信用力を図る一つの基準としても見られることがあります。
特に、対法人向けのビジネスを行う場合、決算書を仕入先などに提出することを求められる場合があり、この際に、資本金の額も観られる可能性が高いと言えます。
このため、安易に低い資本金の額を設定すると、仕入先などからマイナス評価を受けてしまうこともあるかもしれません。
融資取引でのポイント
創業融資を検討する場合、日本政策金融公庫や保証協会の融資商品の中には、自己資金の○倍までというように、自己資金を一つの基準としているものもあります。
例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、一定のケースを除き、自己資金要件が定められています。
このため、資本金1円でも会社は設立できますが、創業融資を検討する場合には、資本金1円でも会社が出来るからと安易に会社を作ることを優先するのではなく、その後の創業融資にまで目を向けて、検討する必要があります。
※厳密には、資本金と自己資金はイコールでないこともありますが、こちらの詳細の説明は、別途、創業融資の記事でご紹介させていただきます。
また、資本金の額が小さければ、小さな赤字が発生した場合でも債務超過(純資産がマイナス)に陥る可能性が高く、その後の銀行融資を検討する場合には、大きな足かせとなる可能性があります。
結局、資本金はどうやって決めればいい?
まず、許認可の関係で最低の資本金が定められている場合には、その設定以上の資本金とせざるを得ませんが、判断基準で大きいのは、資本金の額を1,000万円以上にしてしまうと、設立初年度から消費税の申告が必要になるということ。
このため、特段の理由がなければ、まずは、1,000万円未満で考えてみることが良いのではないかと感じます。
そして、決算書の見栄えを考えると、細かい円単位などで資本金を設定するケースは少ないため、出来れば、100万円単位で資本金を設定したいところです。
対外的な信用力や今後の銀行取引などを勘案すると、1,000万円未満で出来るだけ多くというのが理想かもしれません。
自分の持っている資金をすべて資本金として投入してしまったら、今後の生活資金が足らなくなるということも。会社から代表者に対する貸付けが多くなれば、それはそれで問題になることも。
ベテラン先生