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稼働していない資産を廃棄しなくても除却損を計上できる「有姿除却」の活用を検討してみよう

 
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創業や経営支援分野に注力している税理士事務所です。税理士としては珍しい大手金融機関で融資実務を経験したキャリアを持ちます。どんな些細なことでも相談していただけるように丁寧な対応を心掛けています。
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思ったより早くに新製品が本格稼働しましたので、旧製品を製造する機械は、もう使わないことになりました。

教えて君

ということは、今年度中に旧製品を製造する機械を廃棄して除却損を計上するんだね。

ベテラン先生

廃棄して除却損を計上したいところなのですが、それなりの大きさの機械のため、廃棄するにも多くのコストがかるようで、業者の選定やらで時間がかかりそうです。本当は今期中に除却損を計上したかったのですが・・・。

教えて君

実は、「有姿除却」という考え方があって、廃棄しなくても除却損が計上できる場合があるんだよ。

ベテラン先生

今回の話のように、新製品の稼働であったり、業務縮小による製造ラインの撤退のようなケースで、今後、固定資産を使うことはないけど、年度内に廃棄ができないというケースもあるかと思います。

このように、今後使用する可能性がないのであれば、その実態を考慮して、廃棄していなくても除却損を計上できる「有姿除却」という考え方があります。

今日は、「有姿除却」という考え方をご説明してみたいと思います。

 

今回のポイント
「有姿除却」という考え方があって、要件を満たせば、固定資産を廃棄しなくても除却損を計上できるケースもある。ただし、今後使うかもしれないというものであれば、話は変わってくるので注意が必要になる。

 

有姿除却という考え方

有姿除却という考え方は、法人税基本通達にあります。

次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする。(昭55年直法2-8「二十五」により追加)

(1) その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産

(2) 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの

法人税基本通達7-7-2より抜粋

本来は、固定資産を廃棄したときに、除却損として計上することが原則的な考え方となります。

しかし、もう使わなくて廃棄したいのはやまやまだけど、上記のケースのように、廃棄に多額のコストや時間がかかって、当面は放置するということもあったりするのではないでしょうか。

このような場合、上記の通達の赤字の部分のように、今後使用見込みがないことが明らかと言えるのであれば、その実態を考慮して、廃棄していなくても除却損(処分可能見込み額を控除することをお忘れなく!)の計上を認めようというのが「有姿除却」の考え方です。

 

有姿除却を活用するのであれば絶対に注意したいこと

当然、将来的に、税務調査が実施された場合には、「本当に通常の方法で使用する可能性がないと言えたのか?」ということがポイントになってきます。

この点が認められるかどうかは、個別の事実認定の問題になりますので、その時のその会社の経済情勢など、個々のケースによって変わってきますので、簡単に線引きをできるものではありません。

ただ、上記の会話のケースのように、新製品の出荷に伴って旧製品の使用を中止し、そのことを公に公表しており、さらに、その機械が他の製品の製造に流用もできないことをなんらかの資料で説明できるのであれば、より客観性は高まることでしょう。

このため、この制度を活用する場合は、製品の販売中止などをHPで公表していたり、取引先に通知を出していたり、さらには、社内的な稟議や議事録に残しているなど、客観的に証明できるような資料を事前に準備しておくことが大前提となります。

なお、少しでも不安がある場合は、除却損の計上を急がず、原則通り、実際に廃棄した段階で除却損を計上するという選択肢も一つだと考えられます。

 

有姿除却が使えない遊休資産はどうなる?

例えば、一旦は、使用を取りやめたものの、今後使うかもしれないし、当面は倉庫においておくというようなケースもあるのではないでしょうか。

もちろん、この場合、将来的に使うかもしれないということで、有姿除却を活用することはできません。

ここで注意したいのが、使わなくなってしまった固定資産の減価償却の取扱いです。

稼働を休止している資産であっても、その休止期間中必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものについては、減価償却資産に該当するものとする。(昭55年直法2-8「十九」により改正)

(注) 他の場所において使用するために移設中の固定資産については、その移設期間がその移設のために通常要する期間であると認められる限り、減価償却を継続することができる。

法人税基本通達7-1-3より抜粋

これをみると、実際に使っていなくてもメンテナンスをしていて、いつでも使える状態にあるのであれば、減価償却を計上できるとあります。

一方で、倉庫に放置していて、壊れたまま放置しているというようなケースでは、遊休資産となり減価償却の計上はできないということになるのです。

この点は、見落としがちですので、注意したいところです。

 

税務調査では調査官は現場を見ている

税務調査の場面では、初日に、現場を見せてくださいということで、調査官を工場に案内することも大いのではないかと思います。

当然、調査官の興味で工場を見たいわけではなく、税務処理が適正に行われているのかという視点で工場を見学するわけです。

この時に、ブルーシートが覆いかぶされた大きな機械が工場の隅に置かれていたらどうでしょうか。

おそらく、「この機械は使ってないのですか?結構大きいですけどいつ頃に取得したものですか?」なんて会話になるかもしれません。

つまりは、遊休状態の機械に減価償却費を計上しているのではないか?という視点で聞いているわけです。

このため、こういったことにも注意しなくてはなりません。

 

まとめ

遊休状態の固定資産があるのであれば、廃棄したり売却してしまうことで、キャッシュフローの流出なく経費を計上することができ、節税を図ることができます。

もちろん、廃棄後の維持管理コストや保管コストの削減にもつながりますので、一石二鳥です。

また、廃棄していなくても除却損を計上できる有姿除却という制度は、非常にありがたい制度である反面、税務調査の場面では、客観的な立証も必要になってきます。

このため、この制度を活用する場合には、慎重に進める必要がありますので、ご留意ください。

 

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