優秀な成績を収めた従業員に支払う表彰金。これも課税されるって本当?

従業員のモチベーションを上げるために、社内表彰制度を作りたいと思っています。
ベテラン社長
それはいいですね。優秀な営業成績を収めたり、会社に貢献する提案をしたりした従業員を表彰するというやつですね。
顧問税理士
この場合、税務上、何か気を付けるべきことはあるのでしょうか?
ベテラン社長
表彰制度による賞金は給与とは全く別物と考えてしまって、源泉所得税を控除することを忘れてしまう事例をよく見かけます。
顧問税理士
従業員のモチベーションを上げるために社内表彰制度を導入して、優秀な成績を収めた従業員であったり、会社に貢献する素晴らしい提案をした従業員を表彰している会社も多くあるのではないでしょうか。
従業員の立場からすると、実際にこういった表彰制度によって表彰をされると嬉しいものです。
みんなの前で頑張ったねと褒めらることに加え、賞金などをもらえるのもモチベーションが上がります。
さて、今日は、この社内表彰制度により受け取った賞金は、税務上、どのように取り扱われるのかということを考えてみました。
(従業員側の処理)受け取った表彰金の取扱いは?
社内表彰規定に基づいて、表彰金を受け取った場合、その表彰内容が通常の職務の範囲内のものであれば、その表彰金は給与として取り扱われることになります。
また、現金で支給をするケースもあれば、図書カードや商品券などで支給する会社もあるかと思いますが、現金で支給したものと同様に給与として取り扱われます。
永年勤続者が受け取る記念品等
ちなみに、社内表彰規定が永年勤続者を表彰するものであれば、少し話は変わってきます。
永年勤続者に対して旅行に招待したり、記念品を支給するのであれば、給与として課税されることはありません。
根拠となる所得税基本通達を以下の通り抜粋します。
使用者が永年勤続した役員又は使用人の表彰に当たり、その記念として旅行、観劇等に招待し、又は記念品(現物に代えて支給する金銭は含まない。)を支給することにより当該役員又は使用人が受ける利益で、次に掲げる要件のいずれにも該当するものについては、課税しなくて差し支えない。(昭46直審(所)19改正)
(1) 当該利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められること。
(2) 当該表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。(所得税基本通達36-21より抜粋)
この通達に書かれている通り、永年勤続者を表彰するものであっても、表彰金として現金で支給されたり、現金でなくとも常識の範囲内の金額を超えるものは給与として取り扱われます。
また、概ね10年以上の勤続者を対象として、2回以上の表彰を受ける場合は、だいたい5年以上の間隔があることが要件とされていますので、注意が必要です。
通常の業務の範囲を超える場合
非常にレアケースであるかと思いますが、表彰の対象となったものが、営業成績が良かったりと、業務の範囲内のものではなく、その従業員の業務の範囲を超えるような提案などに対して表彰金が支給されることもあります。
この場合、給与ではなく、一時所得や雑所得として取り扱われますので、注意が必要です。
(会社側の処理)支給した表彰金の取扱いは?
社内表彰規定に基づいて、従業員に賞金や商品券、記念品を支給した場合は、原則として、会社の経費となります。
上記のように、通常の職務の範囲内のものであれば、表彰をした従業員に対する給与として取り扱われますので、毎月支払う給与と同様に源泉所得税を控除する必要がでてきます。
実務的には、表彰金自体は額面で支給して、その後、表彰金を支給した月の給与等に表彰金分を上乗せして源泉所得税をまとめて控除することが多いと言えます。
社内表彰規定に基づく賞金は給与に該当しないものと勘違いして源泉所得税の控除を忘れるケースは、本当に多く見受けられますので、注意が必要です。
まとめ
会社側の経費にはなるものとは考えていましたが、源泉所得税のことまでは考えていませんでした。
ベテラン社長
金額としてはそこまで大きくないかもしれませんが、漏れやすいところですのでご注意ください。
顧問税理士
それにしても、表彰金一つをとってみても奥が深いのですねぇ…。
ベテラン社長