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こんな永年勤続者への記念品は給与として課税されてしまう?

 
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長く勤めてくれる従業員を表彰する制度を考えています。表彰状だけでは寂しいので、記念品も検討しているところです。

若手社長くん

それはいいことだね。ただし、支給する記念品によってはその従業員に対する給与として所得税の課税対象になるんだよ。

ベテラン先生

やっぱりそうなんですね。それであれば、自分で自由に選択できるカタログギフトなんていいかもしれませんね。

若手社長くん

ちょっとまって、カタログギフトも・・・

ベテラン先生

 

社歴が長い企業では、永年勤続者に対する表彰制度を導入しているところも多く見受けられます。

さすがに、表彰状だけでは何とも寂しいので記念品をセットにして渡すところが多いと思います。

しかし、その記念品の内容によってはその従業員に対する給与として課税されることもあり、良かれと思って導入している制度が後々の税務調査で指摘を受けて痛い目にあったということも考えられます。

今回は、そんな永年勤続者に対する表彰制度に関する税務についてご説明します。

 

今回のポイント
永年勤続者に対して支給する記念品等の内容によっては、その従業員に対する給与として課税されることがあります。また、将来的な税務調査に備えて、社内規定等の整備もしっかりと整えておきたいところです。

 

永年勤続者に対する記念品は給与として課税される?

こちらのブログでも何度も書かせてもらっていますが、本来、従業員が会社から現金を支給されたり、記念品をもらえば、当然、その従業員に対する給与として取り扱われることになります。

しかし、永年勤務者に対する表彰制度は、多くの会社で導入されている一般的なものであるため、こういった少額の記念品等の支給にまで課税しなくても差し支えないという考え方で、記念品の支給を給与として課税しないという通達があります。

 

36-21 使用者が永年勤続した役員又は使用人の表彰に当たり、その記念として旅行、観劇等に招待し、又は記念品(現物に代えて支給する金銭は含まない。)を支給することにより当該役員又は使用人が受ける利益で、次に掲げる要件のいずれにも該当するものについては、課税しなくて差し支えない。(昭46直審(所)19改正)

(1) 当該利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められること。

(2) 当該表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。

(国税庁HPより抜粋)

 

しかし、何でもかんでも認められるというわではなく、以下のような要件を満たす場合に限っています。

  • 現物に変えて金銭で支給していないこと
  • 勤続期間等に応じて社会通念上の相当額であること
  • 概ね10年以上の勤続者を対象とすること
  • 2回目以上の表彰は概ね5年以上の間隔をあけること

こういった要件を満たす制度であれば、記念品を受取った従業員は給与として課税されず、また、支給した会社側は福利厚生費として処理することができます。

仮に、福利厚生費として処理していたものについて、税務調査で後から給与だと指摘されることになると、従業員にとっては所得税や住民税を後から徴収されることになりますし、会社側にとっても源泉徴収漏れということでペナルティを受けることになります。

また、これが役員に対するものであれば、当然、その役員に対する役員賞与となり、会社の経費にもすることができませんので、大きな痛手を負うことになります。

 

こんな永年勤続の記念金は要注意

さて、冒頭の事例のように、給与として課税されることが想定される記念品をピックアップしてみました。

 

現金で支給する場合

上記の通達でも定めている通り、現金で支給する場合は当然にアウト(給与として課税)ということになります。

いくら永年勤続表彰と言っても記念品代わりに現金で支給されるのであれば、給与や手当としてもらっているのと同じことで、これまでも非課税にする理由はないということですね。

 

商品券で支給する場合

そして、現金と同様に換金性のある商品券や株券なども給与としての課税対象となります。

 

旅行券で支給する場合

それでは、旅行券も給与として課税されるのではないかと思った方もいるかもしれませんが、旅行券については、条件付きで給与として課税しないことを認めています。

その条件は以下の通りとなります。

  • 旅行券の支給後1年以内に旅行に行くこと
  • 旅行の範囲は支給した旅行券の額からみて相当なもの
  • 旅行の実施状況が確認できるように報告書を会社に提出すること
  • 支給後1年以内に未使用の旅行券がある場合は返還すること

う~ん。せっかく旅行券をもらっても、報告まで求められるなんてなんだかなぁと感じる従業員もいるかもしれませんね。

ただ、趣旨としては、旅行券という換金性の高いものの支給となるため、当初の予定通りに旅行に行ったという実態が重要になるということですね。

ちなみに、過去に大手企業が国税庁に対して以下のような支給であれば、給与として課税しないで良いかと問い合わせた事例があり、これに対して、国税庁は認める旨の回答を行っております。

  • 満25年勤続者に対して10万円相当額の旅行券を支給
  • 満35年勤続者に対して20万円相当額の旅行券を支給

もちろん個々の会社の状況等に応じて変わるため、上記の金額までなら絶対認められるということも言い切れませんが、支給額を検討する上での一つの目安になることは間違いありません。

 

カタログギフトで支給する場合

国税庁の質疑応答事例によるとカタログギフトは、金額にかかわらずアウト(給与として課税)ということになります。

カタログギフトで従業員が自由に品物を選択できるのであれば、それは実質的に現金で支給してその品物を買ったのと同じことだろうという理屈から、給与として課税するという判断になります。

ただし、男性には万年筆、女性にはネックレスなどと定めておき、これらをカタログの中から選ぶというような場合には限定された品目から選んでいるため、給与としては課税されません。

 

税務調査に備えて準備しておくべきこと

将来的な税務調査に備えて、制度の内容を社内規定に整備しておくことが望ましいと言えます。

また、旅行券で支給する場合は、その後の実施状況を確認し、報告書を会社できちんと保管しておくことが必要になりますし、未使用であれば旅行券を回収する必要があります。

このあたりも、なかなか従業員さんには聞きにくいことではありますが、税務調査ではきっちりと確認されることになると想定されますので、注意しておきましょう。

 

まとめ

この記事を書きながら、旅行券の要件を確認していると、本当にうんざりしてしまいました。

せっかく従業員のための制度であるのに、後から根掘り葉掘り旅行のことを確認されて、挙句の果てに会社に対して報告書まで求められるというのはどうなのかと感じてしまいます。

それなら、給与として課税されてしまいますが、割り切って金一封として支給してくれた方が従業員にとってはうれしいのではないかと。

制度を導入することが目的となり、従業員の永年の勤続を労うという本来の目的や趣旨を見失ってしまうようでは逆効果になります。

社員旅行や社宅制度、まかない制度など、経済的利益に着目した節税は、「節税+従業員の満足アップ」の両方を必ず念頭に置かなくてはならないと個人的にはそう思っています。

 

今日の日記

最近は、社員旅行、健康診断・人間ドックと経済的利益に関する記事を中心に更新しています。

最近の興味あるテーマですので、今後も続けて更新をしていく予定です。

節税と言ってもお金を減らさない節税なんて、設備投資や人員増加などに対して適用される優遇税制など、その多くは中小企業にとって簡単に適用できるものではありませんし、選択肢も限られます。

しかし、こういった経済的利益に着目することで、小さくではありますが、節税につながったり、従業員の満足アップにもつなげることができますので、注目のポイントだと思っています。

ただし、当然、税務調査のリスクもありますので、制度設計には相当な注意を払う必要があるといえます。

 

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