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使わなくなったソフトウェアを実際に処分していなくても損失に計上できるのか?

 
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社内管理で使っているソフトウェアを別の会社のソフトに変えてみようかと思っています。

若手社長くん

なるほど。ITツールはどんどん良いものが出てきているからね。

ベテラン先生

別の会社に変えてもデータのパックアップもとりますし、すぐに処分するわけではありません。それでは、除却損は計上できませんよね・・・。

若手社長くん

実は、厳しい要件もあるけど、除却損を計上できる可能性もあるんだよ。

ベテラン先生

 

上記の事例のように、ソフトウェアを新しくするからと言って、古いものをすぐに処分してしまうということは、実務上、なかなか考えにくいことです。

このような場合であっても、今後事業で使う見込みがないのであれば、一定の要件に該当するものであれば、物理的に処分を行っていなくても除却損の計上が認められることがあります。

今回は、ソフトウェアの除却損についてご紹介します。

 

今回のポイント
ソフトウェアについては、実務上の事情を考慮して、物理的な廃棄がなくても除却損を計上できる例外規定が存在します。ただし、将来的な税務調査に備えて、念入りな準備も必要になるため、注意しましょう。

 

ソフトウェアの除却損の原則的な考え方

形のないソフトウェアであっても、機械装置や器具備品のように形のある資産と同じで、除却損を計上するためには、実際に処分したという事実が重要になります。

このため、物理的に処分してソフトウェアが消滅したタイミングで、そのソフトウェアを除却損として計上することができるのです。

 

ソフトウェアを処分してなくても除却損計上が認められる例外的な考え方

先日のブログ記事では、機械装置などの形ある資産について、実際に処分しなくても損失を計上できる「有姿除却」という考え方をご紹介いたしました。

 

 

こちらの記事では、あくまで機械装置や器具備品といった形のある資産を対象としたものなのですが、実は、ソフトウェアにも同様の例外規定が存在しますので、ご紹介します。

 

7-7-2の2 ソフトウエアにつき物理的な除却、廃棄、消滅等がない場合であっても、次に掲げるように当該ソフトウエアを今後事業の用に供しないことが明らかな事実があるときは、当該ソフトウエアの帳簿価額(処分見込価額がある場合には、これを控除した残額)を当該事実が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。(平12年課法2-19「九」により追加)

(1) 自社利用のソフトウエアについて、そのソフトウエアによるデータ処理の対象となる業務が廃止され、当該ソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合、又はハードウエアやオペレーティングシステムの変更等によって他のソフトウエアを利用することになり、従来のソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合

(2) 複写して販売するための原本となるソフトウエアについて、新製品の出現、バージョンアップ等により、今後、販売を行わないことが社内りん議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合(国税庁HPより抜粋)

 

この通達を読むと、物理的に処分していなくても損失として計上することが認められるのは、

  • 今後そのソフトウェアを事業供用しない明らかな事実がある

ということが要件となります。

そして、自社利用のソフトウェアと販売用のソフトウェアの原本に分けて、具体的な例示が示されています。

自社利用のソフトウェアの場合は、業務自体が廃止されたことや、ハードウェア等の変更があったことが、例示としてあげられています。

また、販売用のソフトウェアの原本の場合は、新製品の出現やバージョンアップがあり、販売停止に関する社内稟議や顧客等への通知があるようなケースがあげられています。

このように、物理的に処分していなくても損失の計上が認められるのは、実態として、実際に処分していなくても処分したのと同様の事実があることを理由に損失の計上を認めているのです。

 

物理的な処分がなくても除却損計上が認められる背景

上記の例外規定の背景を知りたいと思い、上記根拠通達の解説本で確認したところ、以下のような背景があるようです。

 

  • 自社利用のソフトウェアの場合、いくらそのソフトウェアを用いたデータ処理業務が廃止したからといって、万が一の自体に備えて、データのバックアップに加えてソフトウェア自体も保存しておくということも十分に考えられる。
  • 販売用のソフトウェアの原本においても、販売が終了したとはいえ、販売した商品の見本としてや、また、ユーザーからの問い合わせやクレームがあることに備えて、ソフトウェアの保存しておくことも十分に考えられる。(法人税基本通達逐条解説を参考に一部要約)

 

なるほど、このように、上記の例外規定の背景には、このような実務上の事情を踏まえてのことだということなのですね。

 

税務調査に備えて社内稟議などを整備する

この例外規定を活用して、実際には処分していないけど損失を計上するということになれば、本当に要件を満たしているのかという観点から、税務調査の場面で念入りなチェックが行われることもあるでしょう。

特に、機械装置などの有形の資産と比較して、無形のソフトウェアについては、今後業務で使わないとする事実を確認しにくいということもあるため、上記のような要件を満たしているということを客観的に証明できる資料を準備する必要があると言えます。

あくまで一例とはなりますが、根拠資料としてはこのようなものが考えられます。それぞれの状況に応じて、客観的な根拠資料を残す必要があります。

  • 業務の廃止等により実際にそのソフトウェアを使用しなくなる事実を示す会議議事録や社内稟議
  • ハードウェア等の変更により、物理的にそのソフトウェアを利用できなくなることを示すソフトウェアの仕様書やメーカーへのヒアリング議事録
  • 販売用のソフトウェアであればそのソフトウェアの販売を停止することにした会議議事録や社内稟議、顧客向けの通知書

当然、損失を計上した後もそのソフトウェアを使用しているという事実が判明すると、当然に、損失の計上を行うことはできないでしょう。

出来れば、実際に廃棄してから損失を計上したほうがより安全だと言えますが、それでも、実務上の問題でやむなくこの規定を使うということであれば、根拠資料もきちん整備し、将来の税務調査に備えた準備を行っておきたいところです。

また、税務調査の場面では、そのソフトウェアを今後事業の用に供しないことが明らかになったタイミングについても、議論の一つとされる可能性があります。

特に、期末間際での判断となると、今期の損失か、それとも来期の損失かということで、厳しくチェックされることになりますので、こちらについてもきっちりと根拠資料を残すようにしましょう。

 

まとめ

機械装置などの形ある資産と同様に、無形のソフトウェアについても、実務上の事情を考慮して、物理的な廃棄がなくても除却損を計上できる例外規定が存在します。

しかし、当然、その後の税務調査等で厳しくチェックされることも想定されますので、しっかりと根拠資料を残しておきたいところです。

 

今日の日記

先月MVNOに乗り換えましたので、携帯電話の通信料金に関するニュースがついつい気になってしまいます。

何年も前の話になりますが、携帯電話の契約時に大きなキャッシュバックを受けれると店頭で勧められて、とあるWiFi契約をしたものの、通信速度は遅く使い物にならないくらいでしたので思い切って解約したら、2年縛りの関係で結構な違約金をとられたことがありました。

確か数万円レベルでした(苦笑)

全てはきちんと調べていなかった自分の責任ではあるのですが、その時から、○年縛りとか、キャッシュバック、複雑な料金体系といったものがトラウマになってます(汗)

最近でもネット契約などでキャッシュバックを受けれるようなものを目にしますが、実際のキャッシュバックは契約してから何か月も先で、しかも、普段使わないだろうメールアドレスに手続き内容が届き、一定期間内に手続きしないともらえないとか、もう嫌がらせとしか思えないような(汗)

だからこそ、料金体系は明瞭で明確、シンプルイズベストだと思うようになりました。

 

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