役員や従業員に対する入院時の見舞金って福利厚生費?それとも給与?

役員の一人が体調を崩して数日間入院をすることになりました。会社から見舞金を支給しようと思うのですが、注意すべきことはありますか。
若手社長くん
それは大変ですね。お大事にしてください。さて、ご質問の見舞金ですが、会社には慶弔規定はありましたか?
ベテラン先生
慶弔規定はまだ何も整備できてません。
若手社長くん
見舞金は給与課税のリスクもありますので、しっかりとルール化しましょう。また、見舞金として支給する金額にも注意が必要です。それでは、ゆっくり説明しましょう。
ベテラン先生
役員や従業員が入院した場合に、会社から見舞金の支給を検討するということもあるかと思います。
しかし、見舞金の支給を受けた役員や従業員は、給与として課税されてしまうのでしょうか?
また、会社の側は、福利厚生費として経費にしても問題ないのでしょうか。
今回は、この見舞金の支給について解説したいと思います。
目次
役員や従業員に対する入院時の見舞金の税務上の取扱い
こちらのブログでも何度も書かせてもらっていますが、本来、役員や従業員が会社から現金を支給されると、原則、その役員や従業員に対する給与として取り扱われることになります。
しかし、今回の事例の見舞金をはじめ、結婚祝、出産祝など、お祝いやご不幸に際して支給される金品は、社会的な慣習のもとに支給されるものということもあり、国税庁のHPでその取扱いを以下のように説明しています。
交際費等とは、得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます。
(国税庁HPタックスアンサーより抜粋)
ただし、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用については交際費等から除かれ、福利厚生費などとされます。
また、社内の行事に際して支出される金額などで、次のようなものは福利厚生費となります。
(1) 創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式などに際し、従業員におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用
(2) 従業員等(従業員等であった者を含みます。)又はその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品に要する費用(例えば、結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどがこれに当たります。)
つまり、今回の事例のような役員や従業員に対する見舞金は、会社側では福利厚生費とされ、また、受け取った役員や従業員の側では、給与として所得税は課税されないということになります。
とはいえ、高額な見舞金であっても福利厚生費で良いのかというとそういうものではなく、あくまで社会通念上の相当額でなければなりません。
それでは、いくらにすれば良いのかという話になりますが、条文や通達で明確に金額基準が定められているわけではありませんが、参考になる過去の裁決事例がありますのでご紹介したいと思います。
金額の目安をどう考えればよいのか?
過去に国税不服審判所で見舞金が社会通念上の相当額を超えるか否かで争われた事例がありますので、ご紹介したいと思います。
見舞金が給与とされるか福利厚生費とされるかで争われた事例
この事例では、100万円を超えるかなり高額な見舞金の支給がなされた事例なのですが、この事例では、国側は、該当法人の所轄税務署管内の支給状況を検討したら入院一回当たり3万円が妥当だと主張します。
一方で、国税不服審判所は、該当法人の地域、業種、規模等を勘案して支給状況を検討したら、入院一回当たり 5万円が社会通念上の相当額だという結論を出しています。
この事例は、あくまで、個別の一事例であって、地域性や業種、規模、個別事業などを総合的に勘案する必要がありますので、どんな事例であっても5万円までなら絶対に大丈夫、又は、5万円以上だと否認されると言い切れるものではありません。
しかし、実務上、とても参考にできる事例であることに間違いはありません。
特に役員給与とされると痛手が大きい
役員に支給した見舞金が社会通念上の相当額を超える場合、その超える部分の金額は、その役員に対する給与だとされてしまい、特に痛手が大きくなります。
会社側は、定期同額給与に該当しない役員賞与として会社の経費とはなりませんし、源泉所得税の徴収漏れにもつながります。
また、役員個人の側では、給与として所得税が課税されてしまいますので、特に注意が必要です。
役員や従業員に対する見舞金の注意事項
役員や従業員に見舞金を支給する場合に注意すべきことを以下に書いてみました。
社内規定を整備してルールを明確化
社内で見舞金を支給する基準や金額を明確にしてルールに従って運用することが望ましいと言えます。
社長には支給するけど、他の役員や従業員が入院しても支給しないという形では、特定の人のみが利益を受けている言われても仕方ありません。
明確なルールを定め、一定のルールの下で運用しましょう。
入院に伴って保険金が会社に支給される場合
会社で医療保険に加入している場合、役員や従業員の入院や手術に伴って、会社に保険金が支払われることもあるでしょう。
この場合、会社に保険金が支給されたからと言って、その金額をそのまま見舞金として本人に支給してしまうと、見舞金の支給額が社会通念上の相当額を超えるとして、給与として課税されることもあります。
例えば、社長の入院手術に伴い会社に対して保険会社から100万円の保険金が支給された場合、そのまま100万円を支給すると見舞金の支給額が大きすぎると言われてしまうでしょう。
あくまで、会社に支給された保険金の額は無関係であって、見舞金として支給した金額が社会通念上の相当額を超えるか否かで判断されることになります。
この保険金が支給された場合の考え方も上記の裁決事例から読み取ることができます。
まとめ
社会的な慣習として認められている見舞金の支給を受けた場合には、給与として課税されることはありませんが、金額によっては、給与として課税されることもあるので、注意が必要です。
また、社内で慶弔規定を作成して、きちんとルールを明確化し、社内規定の下で運用することが望ましいと言えます。
あとがき
先週末は京都の梅小路公園に家族でお花見に。お天気も良かったのでものすごい人でしたが、桜も満開でとてもきれいでした。
毎年、桜の季節になると日本って四季があって本当に素晴らしいなと感じさせられるのですが、桜の季節は同時に花粉の季節でもあります。
風邪なのか花粉なのか分かりませんが、鼻づまり、くしゃみがひどく、先週から家族みんなでダウンしています。。。
去年はここまでひどくなかったのですが、今年は辛いです。。。