2019年以降の個人事業主の消費税申告で気を付けたいこと

2月に入り本格的に確定申告に取り掛かり始めたという方も多いのではないでしょうか。
今回の確定申告では、これまでの確定申告と大きく違う点があります。
それは、2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられるとともに、軽減税率制度が導入されたことであり、とにかく、消費税申告が大変だということです。
今回は個人事業主の方からご質問を受けたことなどを中心に、2019年以降の消費税申告で気を付けたい点を書いてみたいと思います。
目次
消費税率8%は2種類ある?
消費税率が上がる前の2019年9月までの従来の8%(旧税率)と、2019年10月以降の軽減税率の8%は、どちらも同じ8%なのだから全く同じでしょうと思われがちなのですが、実は、この2つは全くの別物なのです。
実は、消費税は、国税部分と、地方税部分に分けることができ、以下のような割合となっています。
- 2019年9月までの8%:国税6.3%+地方税1.7%
- 軽減税率の8%:国税6.24%+地方税1.76
- 2019年10月以降の10%:国税7.8%+地方税2.2%
つまり、同じ8%でも国税と地方税の配分が異なるということなのです。
会計ソフトで記帳を行っている方は、お気づきかと思いますが、2019年9月までの旧税率である8%と、軽減税率の8%では、それぞれ別々に消費税コードが設けられていますので、この2つの違いを明確に分けて記帳を行う必要があるのです。
手書きで申告書を作成されている方も、集計を行う場合は、両者を明確に区分した上で消費税計算をしなくてはならないということです。
1つのレシートに8%と10%が混在していることもある
実際に、2019年10月以降になってみて大変だなぁと感じるのが、一つの請求書やレシートの中に、8%と10%の取引が混在しているケースです。
この場合は、請求書やレシートの原本を直接手に取って確認して、消費税の区分に応じて分けて記帳を行う必要があります。
実際にやってみると、手間はかなり増えたなぁという印象です。
10月以降でも旧税率の8%?確認しておきたい経過措置というルール
2019年10月1日以降に行う取引は、軽減税率の対象となるものを除くと必ず10%かというとそういうわけでもありません。
2019年10月1日をまたぐ一部の取引については、10月以降に行われた取引でも消費税率は旧税率である8%になることもあるのです。
建物の建築などのように長期間を要する請負契約が代表的ですが、それ以外にもいくつか定めらていますので、こちら(国税庁HP「平成31年(2019年)10月1日以降適用する消費税率等に関する経過措置」)などでご確認ください。
軽減税率はこんなところに潜んでいる
とはいえ、うちは、飲食店でもないし、軽減税率は関係ないよと思われている方も多いかもしれませんが、軽減税率の対象となる売上はなくとも、対象となる経費は高い確率で存在するように感じます。
あくまで、一つの例となりますが、勘定科目別に考えてみると、こんなところに軽減税率の対象となる取引が潜んでいる可能性があります。
もちろん、以下は代表的なものであって、以下の例示以外にも軽減税率の対象となる取引が含まれていることがありますので、ご注意ください。

消費税計算に活用できる国税庁の資料
今年の消費税計算を手書きで行う場合は、かなり大変だと思われますが、消費税計算に活用できる資料として、国税庁から参考になる資料がアップされていますので、一部をご紹介したいと思います。
以下は、いずれも国税庁HPにアップされております。

消費税計算の特例も用意されているが…
上記の通り、国税庁からは集計ツールなども公表されていますが、2019年10月以降の取引について、どうしても10%と軽減税率の8%に区分して管理できないという場合には、簡便的な方法による消費税計算の特例も用意されています。
ただ、この特例には複数の方法があり、業種によって使えるものとそうでないものがあったりと、気を付けないといけない点も多く、特例を活用する場合でも余裕をもった対応が必要になります。
あくまで、この特例計算は、2023年9月までの期間限定の特例となり、いずれはこの特例も使えなくなりますので、今のうちから原則的な方法で計算できるに越したことはありません。
もし、さらに詳しく知りたいという場合は、こちら(国税庁HP「消費税軽減税率制度の手引き」)などを活用してご確認ください。
まとめ
今回はたくさんの論点を広く浅く概要の説明にとどめさせて頂きましたが、こうして書いていても制度の複雑さを感じますし、現場の皆様の手間も大きく増していると感じさせられます。
とにかく、今年に限っては、早めの着手が重要だと感じさせられます。